このブログを閲覧して下さった皆様に、薬剤師が考える薬剤師像はどういったものなのかお伝えすることで、今より少しでも薬剤師に対して親近感を持っていただければと思い執筆致します。

薬剤師として

薬剤師が働く職場は多岐にわたりますが、一般的には、保険調剤薬局、病院、ドラックストアが広く認知されていると思います。

創薬に関わる研究職や医薬品の情報提供を担うMR(メーカー)、食品工場の品質管理者として勤務されている方もいますが、現在、大多数の薬剤師が上記 3 つのいずれかで働いています。

医療従事者のイメージは、患者さんと直接対面する仕事がよく思い浮かぶのではないでしょうか。

それ故、上記の 3 つの職場で働く薬剤師の職務は、多くの方が抱く医療従事者像と一致するもので、分かりやすい薬剤師像だと思われます。

将来、薬剤師を目指す学生には、患者さんと対面して働く薬剤師像に自分の将来像を投影する方が多くいますので、現在これら 3 つが薬剤師が勤務する職場の中心となっているのかもしれません。

私もまたその例にもれず、新卒後、地元の保険調剤薬局に就職しました。

そして、今まで多くの患者さんや医療スタッフと出会い、地域医療に貢献すべく、薬剤師の職務を果たそうと研鑽してきました。

この後、保険調剤薬局の薬剤師の職務について、経験談や職務内容等を少しご紹介したいと思いますが、

先に、他の職場も含めた様々な薬剤師の役割の一部を簡単にですがこちらにご紹介致します。

各職場でのいろいろな薬剤師の仕事

  • 保険調剤薬局
    主に処方せん基づく調剤業務を中心に行います。患者さんに対し、処方せんの期限や保険番号に間違いがないか、現在服用している処方薬やサプリメントがあれば重複投与や相互作用の恐れはないか確認し、服薬指導を行います。また一般的な健康相談等も受けつけています。      
  • 病院薬剤師
    入院中の患者さんに対しての服薬指導業務や点滴・注射薬などの調整、他の医療スタッフと連携した患者さんの栄養、運動療法などのサポートスタッフに参加したりします。
  • ドラックストア
    一般的な大衆医薬品を多く取り扱います。また、日用品や美容品、雑貨などの管理も行うことがあります。保険調剤薬局の認可を受けていれば、店舗内に調剤室が設けてある区画で、保険調剤薬局と同様の業務を行います。
  • 製造業(メーカー)
    臨床研究や創薬に携わる研究・開発職や自社製品の安全性などの情報を担当する病院・診療所・薬局に提供する MR 職などがあります。
  • 公務員
    保健所職員として地域の飲食店の食品衛生管理や薬局など医療機関が法令に遵守した運営を行っているか確認する査察や指導、自衛隊に所属し運用する医薬品の管理や災害時の医療活動などがあります。

 

他にも、食品工場での品質管理や学校薬剤師として大学を除く学校の環境衛生管理、大学での教職などもあります。

それでは、この中で保険調剤薬局についてもう少し詳しくご紹介させていただきます。

保険調剤薬局とは

保険調剤を担う職場で働く薬剤師数は全体の 5 割を超えるとされています。

薬剤師の 2 人に 1 人が、保険調剤業務に従事していますので、服薬指導を介した患者さん対応は、薬剤師業務として一番馴染み深いものではないでしょうか。

そんな、保険調剤に基づく服薬指導をメインに扱う医療機関が保険調剤薬局です。

保険と言われると「?」がつく方もいるかもしれませんが、

いわゆる、皆さんが「薬局」と言われて思い浮かぶものに相違ないと思います。

前節にでもご紹介しましたが、処方箋に基づく服薬指導を通して、患者さんの薬学管理指導、健康相談の職務を担います。

保険調剤薬局は、調剤という医療を提供する施設ですが、

現物として医薬品を購入して投薬を行いますので、業態として小売業の側面も併せ持っています。

そのため、日常業務で、患者さん以外にも、処方元の医師や看護師・事務職員、MR、日々薬を届けて頂く卸売り業者、健康食品や衛生用品のメーカー、取り扱っている医療機器メーカー、実務実習に訪れる薬学生やその担当教師など、 幅広い業種や社会性をもった方々と接し、そのお力添えのもとで運営している場所です。

関わる全員が医療の専門資格を持つ方ではありませんが、皆さんひとりひとりに医療に対する考えがあります。

それらは無形ですが、そういった気持の集合が薬局としての雰囲気を作り上げて、患者さんを迎え入れるのが保険調剤薬局だと思っています。

薬剤師の職場は色々あることを紹介できましたが、

では、どの職場においても共通する薬剤師の役割はいったい何なのでしょうか?

次は、そちらをご紹介します。

薬剤師の大きな目的

薬剤師の役割を薬剤師法の第1条では次のように定めています。

「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」

お硬い内容だと思われる方もいるかもせれませんが、これが、全ての薬剤師にとって共通の重要な大義になります。

この大義なくして薬剤師の行動に正当性や正義を認めることは出来ません。

どのような職場であれ薬剤師は、患者さんや社会の健やかな状態の為に職務を全うすることにつきます。

患者さんの健康に帰結するような医療活動でなければ目的を成したとは言えません。

医療行為の終着点は患者さんの健康です。

この条文は言葉にすればわずか 3 行ほどですが、

ただ、これを日々の行動に落とし込むのはとても難しいことでして、

といいますのも、 例えば患者さんに服薬指導をするケース でお伝えすると、

ただ単に薬学の専門知識の提供するだけでは、目的を成したとは言えないからです。

薬学の専門知識を資源とした場合、個々の患者さんの背景に応じて、情報を受け取る患者さんが、ご自身の健康に対して良い影響を与えられるように、 その資源を患者さんが受け取りやすい形に加工させる必要があります。

患者さん背景は様々ですし、置かれている状況もその都度異なります。

お子さんの面倒を見ながら話を聞かれる母親や、お仕事に向かわれる前に立ち寄られるサラリーマンの方、世間話も楽しみたいおじいちゃんおばあちゃん、

情報を最低限しか求めない方やたくさん情報を欲しい方など、

患者さんの医療に対する個々の気持ちや考え方も異なります。

そして、それらを受けて国や地域が、集団論として医療人に求めている医療綱領なども時代や社会状況においてそれぞれ異なります。

患者背景、社会背景がそれぞれ異なる状況のなかで、それらの違いの機微を感じ取って、個々のケースの最適解を模索しなくてはなりません。

伝えるべき情報の取捨選択や順番を変えるなどのテクニックが必要です。

健康に帰結するといった本質にたどり着かなければ、いくら専門性の高い知識をもって、情報提供や医療活動をしても、それは職務を全うしているとは言えません。

では、個々のケースにおいて伝えるべき情報は異なってきますが、情報の源泉はどういったものが好ましいのでしょうか?

続いてご紹介致します。

正しい医療情報とは

薬剤師は薬のスペシャリストと言われています。

薬学に対しての専門性を有しているとみなされた場合、国家資格を有して薬剤師と名乗ることがでます。

つまり、国家試験に合格すると晴れて、専門性を担保できる存在になりますが、

これは、体系的な薬学教育を修得したと客観的にみなされたと解釈できます。

世の中には、様々な情報源がありますが、これを個々人で破綻なく体系的に組み込めるか否かの判断ができるのかが重要と考えます。

一般的に、情報は 1 次情報から 3 次情報に分類され、1 次情報が一番純粋で正確性が担保されているとされます。

しかし、1 次情報の羅列だけでは、個々の情報は正確でも、

患者さんがそれらの情報を噛み砕いて自身の健康情報に集約させた産物が、結果として正確であるかは分かりません。

薬剤師は、己の学問的体系に、その都度新しい情報を組み込んで、吟味精査し、正しい情報のパッケージを形成してお届けします。

なので、いかに体系的にキュレーションされた情報をお届けできるかが、個人的には正しさではないかと思うので、このブログでもそこに注視して執筆に取り組みたいと思っています。

生来の患者さん自身の基本情報に薬剤師が薬学的見地の裏打ちを持たせ、健康に繋げること、

これが、現状、私が行き着いた薬剤師の健康社会への寄与の答えになります。

ここまで、少し硬い話になりました。

次の展開ですが、人と人の関係で社会は形成されるので、

私が考える薬剤師の人間性についてお話させて下さい。

薬剤師の性格の側面も知っていただくと、より上手な付き合い方も見えてくると思います。

薬剤師の人間性

ここは私の主観に基づく薬剤師の社会性です。

ひとことで申し上げれば、

薬剤師はシャイかなと思っています。

薬剤師の職場の中で、一番不特定多数の方とコミュニケーションを取る機会が多いのが保険調剤薬局の薬剤師だと思います。

そんな、保険調剤薬局で働く薬剤師は、コミュニケーション能力がすごく高いかと問われるとウ~ンと唸ってしまいます。

薬のことならまるで立石に水のように次から次へとよどみなく言葉を紡げますが、

いざ、会話が一般的なことになると、急におぼつかなくなってしまう場面をよく見受けて来ましたし。

私もそのような経験はたくさんあります。

職場や友人の薬剤師は気が良くて、普段からはつらつと話す方はたくさんいますし、口調も丁寧で穏やかに話すので、なぜだろうと思うことが多かったのですが、

これは、会話時の専門的な話と一般的な会話に突然の断裂が生まれてしまうからなのではと考えました。

おそらく、専門性と日常性をつなげる接続詞的な働きをする文脈やコミュニケーションスキルが見当たらず、または経験として今まで自然と取り込まれる構造に医療業界はなっていなかったのではと思います。

これまでの医療構造や歴史が生み出した産物かもしれません。

患者さんと専門職の情報量に非対称性が長くつづいているので、

普通なら、何気ない日常会話は人との距離を縮めるものなのですが、

その日常会話が急に、空間の断絶を可視化してしまい。

認識した断絶を飛び込えようする方法を探したり、唖然としてしまうタイムラグがまごまごしてしまう原因なのでしょうか。

これが、無意識下で行われるので、対応策も講ぜす、日常会話の度に何回もうろたえる原因なのかなと思っています。

奇しくも、専門的な会話が円滑なコミュニケーションの橋渡しとなっていたのに、それが急に取り外されてしまうと、一瞬渡る手段が見えなくなってしまうのです。

これを回避するのが、反覆練習による経験ですが、

経験を積む機会の意識的なシステムが医療業界にはあまり存在せず、

個々人でなんとなく経験を積んでいった結果

なので、タイムラグなく洋々と飛び越えられるいらない心配の薬剤師の方も大勢いるとおもいますが、

苦労された薬剤師も一定数いて、なんとなく共感していただけるのではないでしょうか?

薬の話なら得意なんだけどな。飛び越えなきゃなと思いつつ壁からちょっと顔をだして様子みる。先に声をかえけてくれないかな、でも声かけられてもうまく話せるかなとモジモジしちゃう。

それ故私が薬剤師はシャイだと思うのです。

近年、薬剤師が積極的に社会に飛び込むことが求めら続けています。

社会への参画の機会が増えれば、薬剤師はシャイと感じることも薄らいでいくかもしれません。

この節は、主観を通した意見でしたので、抽象的で伝わりづらかったらすみません。

続いて、せっかくなので、現在求められている薬剤師の社会への参画をご紹介致します。

薬剤師の社会への参画

薬剤師の社会への参画。

これは、近年、医療業界でよく議論されるようになっています。

いくつかご紹介すると

  • 地域の健康相談(食事、運動、喫煙相談など)の催しへの参加
  • 多職種との幅広い人材交流
  • 在宅医療、在宅介護
  • 医療派遣チームに参加することによる災害時の支援活動
  • フィジカルアセスメント

などですが、

私が思うに、誰かが綿密に考案したシステムの中で確実性をもって業務に取り組める素養は薬剤師は高いので、

ダイバーシティ化が推進され、社会が多様化する時代で、その潮流に薬剤師も飲み込まれていきますが、おそらく上手く適応すると思われます。

与えられたシステムの中で邁進することも悪いことではないとおもいますが、

ただ、個人的には、最初の取っ掛かりは、一人ひとりの薬剤師が、胸に秘めているそれぞれの医療へ志しから、自ら動き出せればより喜ばしいことだと思っています。

必要とされているのは受動的でなく能動的な行動です。

ずばり、シャイからの脱却ですね。

健康相談だって、ちょっとした世間話から話もはずめば、より信頼を得られるでしょうし、信頼があれば患者さんの安心感も高まります。

なにより、お互い心地よい時間になるはずです。

いま全国に薬剤師は 30万人以上いるとされています。

そのひとりひとりが今よりすこしだけ、進んで社会に顔を覗かせたら、この世界はちょっとずつ良い方向に変わるんじゃないかと思っています。

それが本当の意味で社会への参画になり、より高次元な社会と薬剤師を有機的に繋いだ共生社会になるのではないかと思っています。

このブログの目標

長くなりましたが、以上を踏まえた上で、このブログの目標と指針をお伝えしてこの記事を結びたいと思います。

ブログタイトルの副題にしましたが、となりの薬剤師がこのブログのコンセプトです。

これは、日頃皆さんが接する、また見かける薬剤師の集合的な人格を持たせる意図で名付けました。

私は、平凡な薬剤師です。

学生時代では成績を落とすことはなくとも、優秀な成績でもありませんでしたし、また、学術的な功績も持たず、働いて何かしらの表彰を受けたこともありません。

ただ、毎日やみくもに働いてきました。

時代においていかれないように、勉強は続けてきましたが、それは、多くの他の薬剤師の方と同じような自己研鑽だと感じています。

これまでの経歴で、一つ長所としてあげられるなら、薬局長(管理薬剤師)を任さて頂いたことでしょうか。

それからは、地域の医療拠点を担うべく、保険調剤薬局がどうあるべきかを考えながらも働くことができました。

それでも、もちろん保険調剤薬局の数だけ管理者はいるので、それが特別といった訳でもありません。

しかし、平凡な能力であるが故に、これから書いていく記事の内容は、ほぼすべての薬剤師にとって理解は難しくないでしょう。

また、時折、私個人の経験からくる主観について、他の薬剤師が意見することも造作ないでしょう。

それでは、このブログは大したことはないと思われるかもしれませんが、

今まで、薬剤師と交流する機会が乏しく、健康に関する平凡な薬剤師の考えとも縁がなかった方もいると思います。

この記事をご覧になって頂くことで、普段なかった接点を講じられるのは、インターネットでの情報発信のメリットでしょうか。

そして、ここで知った内容や抱いた気持ちや疑問など、もし気になることがあるなら、それを皆さんが直接話ができる距離にいる薬剤師に相談してほしいと思っています。

現在、大抵の保険調剤薬局では、健康相談も業務の一環ととらえてます。

なので、健康の相談であれば、処方せんを持っていなくても、薬局で何か購入しなくても、相談を受けるのが保険調剤薬局に従事する薬剤師です。

「薬剤師発信の能動的な行動を」とお話をしたのに、相談して欲しいとは厚かましい限りですが、

薬剤師にはまだそういった経験も少ないので依然としてシャイのままなのです。

相談が日常化すれば、薬剤師からの呼びかけも増えていくと思います。

また、多角的な薬剤師の考えが積み重なることで、より、皆さんの健康に寄与すると思います。

皆さんの隣には、私なんかと違って、素晴らしい知識と経験と社会性を備えた薬剤師がいると思います。

相談によって、健康に関して新たな素晴らしい知見に触れることができるかもしれません。

薬剤師はシャイボーイ、シャイガールです。

まだまだなかなか主体的に行動することが難しい人種です。

ですが、より国民の健康に寄与できる潜在能力がまだまだ眠っているはずと信じています。

私は、薬剤師として、薬剤師の仲間が好きですべての薬剤師の活躍を応援しています。

薬剤師総活躍社会の実現にむけて、今ひとつ勇気が持てず、人と触れ合うことに戸惑ってしまうシャイな私も、これからより地域に溶け込んでいくための試みの最初の小さな一歩になるようにと願い、このブログを始めることにしました。

皆さんひとりひとりの傍らに信頼できる薬剤師がついている社会を祈って。

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